2011年5月12日木曜日

『旅をする木』

「時おり、誰かがここにやって来ると、
自然の中で何てすばらしい生活をしているのかと感動するのね。
でも1週間もしたら、皆耐えられなくなってしまうの。
淋しさとか孤独にね、、、
じゃあ私がそうでなかったのかというとそんなことないのよ。
それは痛いほどの孤独と向き合わなければならない。
でもある時、そこを一度突き抜けてしまうと不思議な心のバランスを得ることを見つけたの。

町にいれば、自分自身の中にある孤独を避け続けることができる。
テレビのスイッチをひねったり、友達に電話をかけたりしてね。
その孤独と向き合わないさまざまな方法があるから
でもここではそれができない。
そのかわり、その孤独を苦しみ抜いてしか得られない不思議な心の安らぎがあったの。」

アラスカの海に無数に浮かぶ島々のひとつ、バラノフ島の港町シトカ
そのシトカから20キロ離れた海辺の森
そこに太古の自然のリズムの中で生きる家族
人里離れ、電気も水道もない暮らしの中で培われた優しさと厳しさと穏やかさ

星野道夫氏の心を通して綴られたその一つひとつの言葉の美しさに
心が清々しくなります。

『旅をする木』

孤独と死を受けいれて初めて自分の生き方が始まる、といわれている。
ほとんどの人が、
孤独を逃避するための生き方をしているのではないだろうか。
生まれてから死ぬまで、孤独感を味わわないよう、生きている実感が味わえるよう
何かを目指したり、誰かの愛情を求めたり、、、

その先の心の安らぎはどんなものなんだろう。

宇宙的な心の広さを感じて、途方もなくただその存在の大きさに呆然と感じてしまう。

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